老眼、ドライアイ、白内障…など、加齢や目の使いすぎで起こる眼科トラブルは、遅かれ早かれ誰にでも起こり得るもの。でも、日々のケアや治療次第で予防や改善が可能です。自分の症状に合わせた対策を見つけて♪
年齢と共に気になってくる目の不調をcheck!
見えづらさを年齢のせいにせず、セルフケアや眼科治療で改善を!
「目のエイジング症状は、不調を感じ始める年齢や進行速度に個人差があります。というのも、目の若さは実年齢ではなく、血流の良さや筋肉、細胞の若さに比例するからです。目も肌や体と同じで、血流を促す、筋肉を鍛える、休めるなどのケアを行うことで、トラブルを予防、改善できます」と、眼科医の有田玲子先生は話します。それでも見えづらさを感じたら、放置はNG!「加齢以外の原因があるかもしれないので、早めに眼科を受診して、適切な治療を受けることが大切です」
老眼
ピント調整がうまく行かず、近くのものが見えづらくなる。40代から始まる人が大半!
水晶体の劣化や筋力の衰えで、焦点が合わない
「目の中でレンズの役割を担う水晶体は、周囲の毛様体筋が伸び縮みすることで厚さが変わり、光の屈折を調節してピントを合わせます。近くのものを見るときは、毛様体筋が収縮して水晶体が厚くなるのですが、加齢によって水晶体の弾力性が失われたり、毛様体筋の動きが低下すると、ピントが網膜上にぴったり合わず、見えづらくなります。PCやスマホなど近くを長時間見続ける生活も、毛様体筋の筋力低下を招きます」(有田先生)
【対策】早めに老眼鏡や遠近両用コンタクトレンズをチョイス!
「見えづらければ我慢せず、老眼鏡や遠近両用のコンタクトレンズを使いましょう。疲れ目や目元のシワ予防にもおすすめです。また、毛様体筋の筋トレも習慣に1時間に1回程度、顔の前に立てた親指と遠くの景色を10秒ずつ交互に見るようにします。眼科では、遠近両用の眼内レンズを挿入するICL手術も選択できますが、両眼200万円近くと高額です」(有田先生)
手元から遠くまで自然に見える
乾燥しにくい“生感覚”の快適なつけ心地。
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手元の文字がラク&おしゃれに読める
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ドライアイ
目を守る質のいい涙が不足して、乾きや痛みが生じる。疲れ目や視力低下の一因にも。
涙の分泌量や質の低下で涙の膜に隙間ができる
「ドライアイは涙の病気。涙は水層、油層、ムチン層からできていて、ヴェールのように瞳を覆い、乾燥などの外的刺激から目を守っています。ところが加齢や目を酷使する生活習慣、ホルモンバランスの乱れなどが原因で涙の量や質は低下します。涙の膜が不安定な状態になって、瞳の潤い不足を招くのです。また、涙にはたんぱく質やミネラルなど瞳に必要な栄養分も含まれるため、ドライアイから疲れ目になることも多いです」(有田先生)
【対策】まずは乾き目用の目薬でケア。改善しなければ眼科治療へ
「乾き目の自覚症状があったら、まずは市販の目薬を使ってみましょう。改善しなければ、放置せずに眼科へ。眼科では、涙のどの成分が不足しているかを検査した上で、その方に合わせた目薬を処方します。また、油の量や質の低下が原因のタイプには、マイボーム腺(油の出口)の機能を光治療で改善する新しいドライアイ治療『IPL』も選択肢のひとつです」(有田先生)
涙不足による角膜のダメージをケア
痛みを感じるような乾き目を潤い成分で改善。
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目の潤いを守る涙のトラブルをケア
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白内障
加齢などにより水晶体が変質して光を通しにくくなる
加齢などにより水晶体が変質して光を通しにくくなる
「水晶体は本来透明で光をよく通し、網膜にはっきりと像を結びます。ところが、加齢などが原因で水晶体を構成するたんぱく質が変質すると、濁りが生じて光が通りにくかったり散乱したりして、物が見えづらくなります。水晶体の中央から濁ってくる『核白内障』は、40代でも発症し、放っておくと水晶体が硬くなるため、早めに手術が必要な白内障の代表格。そのほか、アレルギーに起因する『アトピー性白内障』や、PC作業が長い人に多い『若年性白内障』も注意が必要です」(赤星隆幸先生)
【対策】眼内レンズを挿入する手術で改善!保険適用も選択できる
「水晶体は1度濁ると元には戻せないため、白内障を治すには手術しかありません。白内障の手術は、濁った水晶体の代わりになる眼内レンズを入れるもの。焦点を遠方か近方のいずれか1か所に合わせる『単焦点レンズ』なら、保険適用の3割負担で、片目5万円、両目10万円程度で行えます。手術で移植された眼内レンズは半永久的に劣化しません。早く手術に踏み切れば、その後はずっとラクに見える状態が続きます」(赤星先生)
老眼や乱視も同時に治せるレンズも!
「白内障手術に使う眼内レンズは著しく進化していて、今や白内障だけでなく、近視や遠視、乱視、老眼も同時に治せる時代です。多焦点レンズを使うと、老眼も治して手元から遠くまで自然にピントを合わせることができます。また、角膜のゆがみによって生じる乱視も、乱視矯正機能のある『トーリックレンズ』を使えば、白内障と同時に治すことが可能です。多焦点レンズで手術をした場合、術後はメガネをかけずに日常生活を送れます」(赤星先生)
40代でも起こる白内障は…
近視の強い人が発症しやすい
核白内障
水晶体の核の部分から均一に濁ってくるため診断がつきにくい。本来視力が安定しているはずの40代以降で近視が進んだ場合は、核白内障の疑いが。進行して水晶体がカチカチに硬くなると、手術が難しくなる。
アトピー性皮膚炎や花粉症の人に多い
アトピー性白内障
アトピー性皮膚炎や花粉症など、アレルギー素因をもつ人は、早いと20代でも白内障を発症することがある。水晶体の後方側がすりガラスのように濁り、初期からまぶしさや視力低下の症状が出る。進行も早い。
PCを長時間使う世代に増加
若年性白内障
PCを使う30~40代に増えていて、大半が片方の目から先に発症する。水晶体の前側中央にヒトデ形の濁りが生じ、明るい場所で視野全体が白っぽくなる。比較的進行が早く、ヒトデ形が瞳全体を覆う程大きくなる。
飛蚊症
瞳を動かす度に糸くずや虫、アメーバのような浮遊物が見える。網膜裂孔(もうまくれっこう)が原因の場合も
硝子体が溶けて濁りが生じ、その影が浮遊して見える
「眼球の内部を満たしている硝子体は本来ゼリー状ですが、加齢によって徐々に液化します。そうすると、硝子体が不安定になって網膜から剥がれ、濁りが浮かんできます。その濁りが網膜に影を落とし、浮遊物として見えるのです。濁りが網膜の近くにあるときは虫のようにはっきり、遠くにあればぼんやりアメーバのように浮かんで見えます」(赤星先生)
【対策】まず眼科を受診。網膜のダメージが原因の場合はすぐに治療を
「加齢が原因で起こる硝子体の濁りは、消えてなくなることはないけれど、放っておいても問題ありません。そのうち光の通り道から位置がズレて、影は見えなくなります。ただし、網膜と硝子体の癒着が強い部分が剥がれ、網膜に穴があいた『網膜裂孔』による飛蚊症は要注意。放っておくと『網膜剥離』で失明の可能性もあるので、すぐに治療が必要です」(赤星先生)
加齢黄斑変性
発症率は少ないが、放置すると失明も!物がゆがんで見える初期症状を見逃さないこと
網膜の黄斑にダメージが生じ、視力が著しく低下する
「その名のとおり、網膜の中心部分である黄斑が加齢に伴って変性し、視力が低下する病気。紫外線の光刺激や喫煙、肥満などもリスクファクターになります。初期段階から格子柄の中心辺りがぐにゃっとゆがんで見えるので、自覚するのは早いはず。気づいたら早めの治療が肝心です。特に、脈絡膜から異常な血管が発生する新生血管型タイプは、血管が破れて出血することもあり、進行すると失明の危険性も」(有田先生)
【対策】放置はNG!眼科で原因物質を抑える硝子体内注射を
「近年、脈絡膜新生血管増殖の原因物質『VEGF』を抑える薬剤が開発され、これを白目部分に直接注射する硝子体内注射が治療の中心になっています。以前は大がかりな外科手術でしか治療できなかったものが、外来ですむのは画期的。手術の場合は失明を避けられるだけでしたが、硝子体内注射だと、ゆがみの矯正、0.7~0.8程度の視力維持も可能です」(有田先生)
緑内障
40歳以上の20人にひとりが発症。視神経が傷ついて視野が欠けていき、治療が遅れると失明の危険あり!
眼圧で視神経が押し潰され、視野が狭くなる
「目からの情報を脳に伝える視神経が眼圧によってダメージを受け、視野が狭まったり、部分的に見えなかったりします。元々視神経が弱いと正常眼圧でも発症する場合があり、日本人の緑内障はこのタイプが主流。初期に自覚症状がないため、以前は手遅れになることも多かったのですが、今は網膜を断層撮影するOCT検査で早期発見&治療が可能に」(有田先生)
【対策】早期発見・治療が大切!眼圧を下げる点眼治療から
「治療は点眼がメイン。眼圧を下げる目薬を使います。元々眼圧の高くない人でも、点眼によりダメージの進行を抑えられます。点眼でコントロールできなければ、レーザー照射で眼内の房水(毛様体で作られ、血管を通って外へ排出される透明の液体)の流れを変えたり、排出を促す治療へ。点眼もレーザー治療も外来で、保険適用で行えます」(有田先生)
大人の目のトラブルを予防&軽減するセルフケア
【目の不調全般】
1. サングラス で紫外線から目を守る
\薄いブラウンのレンズがベスト/
「紫外線は、ドライアイや白内障をはじめ、あらゆる目のトラブルの大きなリスク要因です。外出時はUVカット率の高いサングラスを常用して、光刺激から目を守りましょう。レンズの色は濃いと瞳孔が広がって光を吸収しやすいので、薄いブラウンがおすすめです」(有田先生)
【目の不調全般】
2.適度な運動や 入浴 で血流UP!目を 温める ことも有効
「全身の血流促進は、目のエイジングケアにもつながります。適度な運動や湯船につかる入浴習慣などは、巡りのいい体作りの基本です。また、目をじかに温めるのもおすすめ。マイボーム腺の油分を溶かして涙の分泌を促す効果もあり、ドライアイの改善にも」(有田先生)
【目の不調全般】
3.目を こすらない !
「目をこする習慣があると、チン小帯という水晶体を支える線維が劣化します。アレルギーなどでかゆくてもこするのはNG!」(赤星先生)
「目をゴシゴシ洗うこともよくありません。目元の洗浄は専用シャンプーの使用がおすすめ」(有田先生)
目元の汚れを優しく洗浄!
有田先生など眼科医3名が開発に携わったリッドハイジーン(眼瞼清拭)専用の泡シャンプー。低刺激で目に染みない。
ビジョン・リーディング・パートナーズマイボシャンプー50 50ml ¥1,500
【ドライアイ】
4.まばたきの回数を増やして、 涙の分泌 を促す
「涙はまばたきをすると出るのですが、PCやスマホを長時間使う人はまばたきの回数がかなり減っています。涙には目の健康に欠かせない重要な栄養成分がたっぷり。まばたきを意識的に増やし、涙の分泌を促すことで、ドライアイや疲れ目の軽減にもなります」(有田先生)
「涙を分泌させるには、上まぶたと下まぶたをしっかりくっつけるまばたきが必要です。それには眼輪筋のトレーニングがおすすめ。目をパチパチと開き、ギューと閉じる“まばたき運動”を習慣にしましょう」
\パチパチ/
\ギュー/
【ドライアイ】
5. マスク は目の下に隙間を作らないように装着
「このところの長引くマスク生活で、ドライアイ患者が増えているという報告があります。マスクの上から漏れる息の風が涙を飛ばしている可能性も。マスクをしてメガネがくもる人は息が漏れている証拠です。マスクは上部に隙間ができないように、ぴったり装着しましょう」(有田先生)
【目の不調全般】
6. たんぱく質、ビタミン・ミネラル …バランスの良い食事はマスト!抗酸化や抗炎症も意識して
「体の健康が目の健康のベースとなるため、栄養バランスの良い食事を心掛けることが重要です。特に、筋肉を作るたんぱく質や、抗酸化作用の高いビタミンCやE、ポリフェノール、抗炎症作用のあるビタミンKやカリウムなどは意識してとるようにしましょう。サバやイワシなどの青魚に多いオメガ3脂肪酸も抗炎症作用が高い上、涙の油の質を高める効果もあるので積極的にとってください」(有田先生)
【加齢黄斑変性】【白内障】
7.ルテインを味方に!
ルテインは、水晶体や黄斑部にも存在する抗酸化成分。加齢で減少しても体内で合成できないため、食事やサプリメントでとることが必要です。
「ルテインは加齢黄斑変性の治療にも使われます」(有田先生)
ふた粒で20mgのルテインを手軽に補給できる!
抗酸化作用の高いルテインに加え、抗糖化作用のあるヒシ果皮ポリフェノールも含有。1回ふた粒で、目のヘルスUPを体の内側からサポート。
参天製薬 サンテ(R)ウェルビジョン 60粒 ¥4,320
「目元の筋肉がコリ固まっていると、まばたきの回数が減ってドライアイの原因になるほか、血流やピント調整機能の低下にもつながります。目周りの筋肉をほぐすこの3つのストレッチを習慣にして、視力UPを目指しましょう!」(村木衣さん)
1.目元への血流をUP!
耳の穴ストレッチ
各10秒
耳の穴に親指を引っかけるように入れ、残りの4指で頭を軽くつかむ。息を吐きながら耳の穴を(1)の方向に広げながら10秒数える。同様に(2)、(3)、人さし指に替えて(4)、(5)と、自然に呼吸をしながら行う。
2.目の疲れを取る!
後頭下筋群ほぐし
「うんうん」「いやいや」を1か所3回
後頭下筋は目を動かす筋肉と連動。テーブルにひじをつき、頭と首の境目に親指を引っかける。頭の重みを指に預けて斜め上を向き、小さく「うんうん」「いやいや」と首を振る。位置を変えながら襟足全体を行って。
3.目周りの血行を促す
眉毛下制筋ほぐし
左右各15秒
右手の親指を右眉頭の下のくぼみに当て、左手の親指と中指で鼻のつけ根をつまむ。右手は上へ、左手は下に引
っ張っりながら「うんうん」「いやいや」と首を小さく振る。手を替えて反対側も同様に行う。